11月4日
大阪 西梅田 TGIFRIDAYS

 ホンマに見渡すかぎり雲ひとつない、ものすごい「カリフォルニアの青い空」的天気。長ソデTシャツがー番気持ちいい。
 思い出したのがAmerican No1 CasualRestaurantを名乗る『TGI FRIDAYS』のハンバーガー。関西にはUSJ前とこの梅田店しかなく、「むっちやすごいハンバーガー」と知人は言うてた。それを食べに行くのだ。
 昼1時前に行くと、英語を喋るガイジン客が1組と女性2人客、そしてサラリーマンOL客のグループなどなど。だれもいないカウンターに座る。
 あるある、「ザ・ファイアー・バーガー、フリードリンク付き1,300円」というやつが。ほかに、ランチと週替わりのメニューは「シーフード・スパゲティー・マリナラソース」「アボカドチキン・タコス」とかですべて1,000円。ほかの客を見回すと特別ランチサービスなのだろう、アメリカンなステーキを食っている人もいる。
 ハンバーガーはマクドやモスといったファストフード、あとは確か『なんばパークス』にあったハワイ系の店のもんしか食べたことはないが、オレは余程でないとハンバーガーは食べない。
 が、本日のカリフォルニアの青い空の天気がオレをそうさせたのだろう。アルバート・ハモンドの「Seems it never rains in southern California」という唄が出てくる。ギルバート・オサリバンの「Alone again, naturaly」とかクリーデンス・クリアウォーター・リバイバルの「I want to know, Have you ever seen the rain?」も脈略なしに出てくる。
 波乗りをやってた頃、アメリカの西海岸にはよく憧れて、70年代後半にロサンゼルスやサンディエゴなどに行ったほどだった。そのころのメイドインUSAは、ケッズのバスケシューズからリーバイスのジーパンなどファッション、JBLのスピーカやマランツのアンプ、イーグルスやパロ・クルーズ、クルセイダーズの音源、クアーズとかプリモとかのビール。もちろんディック・ブルーワーやロバート・オーガストのボードやオニールのウエットスーツやケイティンのトランクス。かっこよかったなあ。
 金融資本主義とミサイルやら戦闘機の軍事産業、Amazonドットコムしかないような今からすると、何でアメリカはこういうことになったんかと思う。そんなことを考えながら、先に出てきたデカいタンブラーに入れられたおかわり自由のペプシコーラを飲む。例のケチャップとマスタードも一緒に出てきた。お、灰皿がある。煙草吸えるな。アメリカは完全禁煙ちゃうんか?

 デカい画面のテレビが何カ所もあって、野球ではなくてラグビーのワールドカップをやっている。「スポーツバー」ちゅうのもよう流行ったな。音声の代わりにスピーカーからはアメリカンポップスが結構デカい音で鳴っている。カウンター内には金魚鉢みたいなデカさの脚付きグラスやボストンシェイカーがいくつも並んでいる。
 そうして待つこと15分。やっと出てきたハンバーガー。さっきまでこの店で見てきたものは何でもデカいが、これはアホほどデカい。200gのパティだそうだ。
 楽しいな、というより一歩退いてしまっておもわず笑うしかない。上になにやら「揚げ物」が載っている。オリープのフライ?まさか。つまんで食べると辛い辛い。これが「ファイアー」なんだろう、ちょっと変わったビーマン系唐辛子?訊くと「ハラペーニョです」とのこと。しっかしこんだけ全部食べられへんやろ。
 固くてデカいTボーンステーキを切るようなノコギリ歯がついたナイフが添えられている。これみんな、どうやって食べてるんやろ。パンと一緒に食うんやんね。
 そうか、アメリカンフットボールの選手やプロレスラーになった気分で「食べたいように」食べたらええやんね。コーラがよく入るのでおかわり。
 「もうあかん」とポテト半分とパン3分の1を残しながら噴き出る汗。大汗をかいて風呂上がり状態でギブアップ宣言。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅