11月11日
大阪 黒門市場 浜藤

 鮮魚店の『岩瀬』そして青果店の『なべじ』どちらも大阪中のプロ中のプロ御用達の黒門の店。その取材中にてっちり『浜藤』の店頭で「てっちりコース[浜]付出・湯引・てっさ・てっちり・唐揚・雑炊5,000円。税サ込価格5,500円、とあったもんだから思わず入る。
 ここはカウンターがあって「一人でっちり」いけると覚えていたからだ。
 聞けば5,000円のコース、もう10年ぐらいやってるとのこと。突き出しの煮こごり、湯引きと進んで出てきたてっさの色の見事なこと。板前さんに訊くと1日以上ねかすのがこの店の流儀とのこと。ネルの布に包んで冷蔵庫で熟成させるのだ。そのネルの布を見せてくれる。
 てっちりは前も書いたが、黒門のフグ専門店『みな美』さんにいつもお世話になっているが、それは家で食べるからであって、お持ち帰りのみ。

 このクラスのてっちり屋になってくると、畜養ものでもまあまちがいない。なのでてっさやてっちりの切り方、ポン酢の具合の好き好きになってくる。
 同じ黒門の『太政』は切り身がデカくて手で持ってかぶりつくという感じだが、ここのは小さく身離れがいいように切ってあって食べやすい。
 10,000円のコースはフグは同じだが、量が多いのだとのこと。まあ昼から一人てっちりはこんなもんで。
 しっかしええヒレ酒用の蓋付き湯飲み使こてるな。ちなみに岸和田・ミナミオレの周りは、ヒレ酒は「ひれしゅ」であって「ひれざけ」と言わない。どっちがどうだと、一度話題になったが、岸和田の祭礼関係のてっちり奉行のツレに電話すると「そんなもん『ひれしゅ』に決まってるやんけ。『注ぎ酒』のことを『つぎざけ』言うかえ」とのこと。なるほどそれは言える。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅