11月30日
大阪 心斎橋 まつりや

 もうひとつの生野オリジンの焼肉「ちりとり鍋」。[万才橋]の弟さんが心斎橋に出てきたやった店がこの『まつりや』である。
 「ちりとり鍋」というのはちょっとインパクトありすぎの呼び方かも知れないが、この店がミナミに出店した14年前、確かライターの曽束政昭が『ミーツ』誌の記事にそう書いて、広く認知された焼肉・ホルモン料理だ。
 一番の特徴である鉄板は、50年以上前にこの『まつりや』の店主・中山由夫さんのお父さんが、近所の町工場の溶接工に頼んでつくってもらったものだ。
 「ようこんなもん、おやじは考えましたわ。それをつくった金属工の職人も凄い」と語る調理器具だが、鉄板を折り曲げて四方を丁寧に溶接している。両方に取っ手もつけられている。見事な職人技だ。
 ちりとり鍋はキモ焼き、鍋、うどんかご飯というのがコース。焼肉・ホルモンとすき焼きのおいしいどころ取りをしたような、全く新感覚の肉料理だ。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅