1月26日
大阪 船場 美々卯本店

 一番大阪らしい鍋料理の「うどんすき」。
 『美々卵』のいいところは、はじめのところを仲居さんがやってくれることだ。
 ダシを注いでくれて、それからすぐにうどんを入れる。「え、もう入れんの?」というところだが、それはそれ。10数種ある具のちょうど半分をフィックスしてくれて、あとは自分たちで。
 だいたいハマグリから食べて、湯葉、焼きあなご、シイタケとなったときに、クルマエビが塗りの箱に入れられて生きたまま出てくる。
 仲居さんが「奥でしてくることもできますが」と言ってくれる。熱いだしに跳ねまくる断末魔を見たくない客もいるからだ。
 もちろん自分でする。頭のすぐ下をトングで掴み、腹側から入れて死んでもらう。いつ食べてもここのエビは、比類比肩するものがないほどすごいうまい。
 メニューにあったおすすめの蟹、河内鴨もスペシャルな具として注文。魔法のように「煮詰まらない」ダシ。追加無料のうどんを3分の1残してお腹いっばい。餅は包んでもらって持って帰ることにする。
 しかしここのうどんすきは、どの方面から見ても文句が付けようのない完成された料理だ。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅