2020.05.09
封鎖四七日目
Lockdown Day 47 晴れ
夏みたいに暑い。日本の夏とは比べるまでもないけど、それでも暑いもんは暑い。表出てまだ3分やのに「暑いー暑いー」とへろへろ歩いていると、ねきの教会の前を通りかかったところでツレが「見て見て!」と大きな声をだした。なんやいなと目を遣ると狐が前庭の芝生に寝とおる。
英国の都会に棲む狐は触らせてはくれへんけど(つか、エキノコックスおるし触ったらあかん)わりと至近距離まで近づいての逃げへん。警戒心を見せへん。それでもこんな真昼間に柵の向こうとはいえ飼われてるみたいに堂々と寝そべってるのは珍しい。
そやけど、あれやな。背中の毛ぇがずいぶん寂しいな。地肌が見えとる。尻尾も毛が抜けてて鼠みたいになっとる。これは皮膚病かなんかやないか。そう考えると、なにやらしんどそうな、けだるい顔してへんか。横のツレにRSPCA(英国動物虐待防止協会。たいそうな名前やけど普通の保護活動もしている)に連絡したほうがええやろか? と訊くと「換毛期やし大丈夫やよ」と言われるが、やはり不安。念の為、家に帰ってサイトにリポートだけは提出しておいた。 この微妙に不安な感じ。手を出しとうても出せへん、助けたくても助けられへん、助けが欲しいんかどうかも判らへん感じ。ありがた迷惑しとない気持ち。コロナ禍のロックダウン下ではしばしば味わわされる。対象は人やけど。狐、あんじょうなりますよう。
散歩帰りに立ち寄った街中スーパーでツレが「見て見て!」と大きな声をだした。「狐がアイスクリームケースにでもおったんかいな」と振り返ったら、こんどはチーズどした。『Castello』というメーカーの「Cream Blue」という青かびチーズ。
「これ、めっちゃ美味いねん。そやけど、もう20年くらい売ってんの見んようなったんで廃番になったか会社が潰れたかしたと思てた」
なんかねえ、ロックダウン以降、こういう〝懐かし〟商品や昔の味がよう出回ってる気がする。パッケージのデザインが60年代、70年代したお菓子とか。ブラシで泡立てるタイプの髭剃り固形クリームとか。スーパーだけでなく普通の店でもそう。時代遅れになっても細々とお商売を続けてはったんが、ひょんなことで再び日の目を見たとか、そんなんやろか。
というわけでお昼はパンにクリーム・ブルーをこってり塗りつけていただきました。付け合わせはクレソンのサラダ。金柑のコンポートとバルサミコ酢を合わせたドレッシング。うん。んまい。スティルトンとかのほんもんのブルーとはまた違った嬉しい味。