2020.06.19
封鎖八八日目
Lockdown Day 88 雨のち晴れ。
まだ5日前に買ったばかりのアプリコットが、美味しいんだけど熟す前に傷みかけてきました。ちょっと蒸し暑かったからなあ。こういうのはほっとくと一晩にして腐海の風景が出現するので昨夜慌てて調理。といっても少量のパーリンカ(果物で作るハンガリーの蒸留酒)とデメララシュガー(粗糖/赤粗目)大匙一杯を加えて5分ほど煮ただけですが。
果物はたいがい火を通すと甘みが立ってきます。その頂点で糖を追加すると、さっと色鮮やかになって、そこで過熱を止めると甘味が固定される。
ただし保存がきかないので早々に使い切っちゃわねばならない。冷蔵庫にも入れず鍋のまま一晩置いて地中海ヨーグルトと半々の分量でいただきました。
儂は人に言われるほど料理上手ではありませんが、こういう駄目になりかけた食材や、ハズレを引いちゃったときの対処はそれなりに上手い。つか〝なんとかする〟のが好きみたい。娯楽ですね。テクが必要な料理や手間のかかる一品を仕立てる愉悦も知ってるが、知識と理論と経験値を総動員して〝なんとかする〟快感はなかなか得難いものがあります。
〝なんとかする〟には正解も正攻法もありません。煮果実みたいな即席もあれば、延々と煮込んだり燻したりマリネしたりして長い時間がかかるものもある。白魔術めいた調味料の調合や、他の材料とのマリアージュで化学反応を起こさせる方法もある。
そして料理をする人たちならみんな知ってるけど意外なくらい〝なんとかする〟ことはできても、勝手に〝なんとかなる〟ことは絶対にない。
いまだにコロナを「ただの風邪」だと信じてる人がいるようですが、ただの風邪には特効薬がないのはご存じですよね。でも様々な予防法や治療法、薬品との組み合わせで風邪は〝なんとかする〟ことができるようになっています。ワクチン実用はまだずっと先になりそうなので、そういう意味では、ただの風邪以上の病気ではあるけれど、コロナもただの風邪的に〝なんとかする〟しかありません。
ニューノーマルってのはコロナのせいで常識が歪んでしまった世界ではありません。コロナを〝なんとかする〟ためのトライアル・アンド・エラーなんだと儂は認識しています。ほっといても〝なんとかなる〟は期待できないんだから。
たとえば用を足したら上蓋をおろして流すだけで飛沫による拡散を96%も防げるのだと聞けば実行しないわけにはいきますまい。飛沫は閉じた空間では2時間くらい留まっているそうですから。これから外出が増えて公衆トイレを利用することもあるでしょう。便座を消毒スプレーで拭くだけでなく、他の人たちのために上蓋してフラッシュ。難しく考える必要はない。ニューノーマルってそういうことです。