3月1日
自宅 てっちり

 ここ数年、恒例の2月末から3月初旬の「家ででっちり」。今年は大人8名、子ども1名。
 昨年同様、黒門市場のふぐ専門の魚屋「みな美」で2日前にお願いする。
 この店は明治初期の創業で、黒門では老舗中の老舗。岸和田の祭礼関係の旧い友人が長く働いているので、電話で「今年は9人。いつも通り白子食べたいし皮もようけ欲しい。1日の3時ぐらいに取りに行くわ」と伝える。「ほな1.5kgぐらいの3本いっとこか。それの方が白子多いし。まあ、任しといて。その日休みやし社長に言うとくわ」とのこと。
 当日、黒門市場の店でもう一人と待ち合わせる。9人前は重いからだ。社長が「毎度」と言って、紙袋2つを持ってきてくれる。「五軒屋町さん」と名札メモが貼ってある。一袋を開けてくれて「でっさ9人分。白子はこんなんや」と見せてくれる。
 どっひゃ〜。死ぬほど大きい白子。ふぐ本体の3分の1ぐらいの大きさあるんちゃうか。さすが3本ともええのを当ててくれてる。てっさは早朝から引いていてくれている。熟成して一番良い状態で食べられるようにというのも例年通り。値段は「値打ちありまくり」とだけ言うておく。

 急いで家に帰る。5時集合なので40分以上ある。「みな美」まで一緒に取りに行ってくれた。「てっちり体質」で育った西成出身の主力メンバーが「皆揃うまで焼き白子いっとこか」ということでもちろん賛成。白子は9人で食べても通風の発作が起こるほどある。4〜5cm幅に切って塩を振ってホイル焼きを焼き始める。それを2ラウンド繰り返し中にほかの仲間が来た、来た。「おー、白子先に食うてるで。よーけあるしこんなんや」。見せると歓声が上がる。
 さててっちり始めるぞ。まずアラ身だけ。でっちりはぐらぐらと沸かしたらあかん。くちばしやウグイスも入れて2ラウンド。「白子いこか」。一人4つ見当か。
 スペアリブ身に豆腐や春菊も参戦して、1時間くらい食べまくり飲みまくりで後半また焼き白子。しかし白子はほんま食べ飽きせえへんな。
 また来年。

記事一覧
江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅