3月7日
大阪 京橋 岡室酒店直売所

 京橋の「立ち呑みの名店」。10人入ればいっぱいの狭い店で、外から中の客がよく見える。立ち香み屋は結構、ローカル性が強くて、「濃い客」が多い店などは、行きつけでないと馴染めないが、この店は「入りやすく出やすい」。
 ここのアテはおでん、串もの、揚げ物…と何でもアリだが、手書きの短冊に「板わさ1本\250」などと書かれたメニューがかなりいける。
 この日、隣り合わせた客がビールを頼むと、金属製のタンブラーが出てきた。おもわず「エエですね、マイグラスですか」と言ったら、親しく話してくれた。「おやち漫画家」の中島宏幸さんだった。この店の改装の時に暖篇の文字を書いたことなど、いろいろお聞きして楽しかった。中島さんは日曜日以外、毎日18時〜20時にこの店に来るのを17〜18年続けているらしい。
 かれは所謂「常連」で、わたしは多分この20年で10回ぐらいの客だが、こういう話しやすいコミュニカティブな店の空気は、なかなか出せるものではない。 立ち呑みなどは「客で店が決まる」典型だが、そうやろうと思って出来るものではないのだ。
 とても良い、下町パブリック極まりない店。

記事一覧
江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅