6月15日
神戸 元町 蛸の壺

 「明石焼き」を食べに行く。
 と、書くのは読者が地元明石や神戸以外の人が多いからだ。
 地元では「玉子焼き」という。もう20年ほどの前の記憶だが、明石の地元の人はその「玉子焼き」のことを「鍋」と言うてて、ナンボ何でもそれはないやろと思ったが、明石焼きの鉄板はたこ焼きのそれと違って銅製であり、それを「銅鍋」あるいは「鍋」と言うらしい。
 大変にユニークなローカルの話題だ。
 ちなみにたこ焼き器としてのもうひとつの違いは、木柄がついていること。焼き上がると上から木製の台(「上げ板」というらしい)をかぶせて上下ひっくり返して明石焼きを載せる。だから柄がないと店で明石焼きは出来ない。
 またその明石焼きは通常ダシに浸して食べるのだが、ソースを塗ってからダシに入れて食べるところもある(神戸の垂水や長田)。 この店は、元町の大丸そばの路地にあるが、メニュー名を「玉子焼き」として出している。ここがその呼び名の東限だと、何となく思う。多分、三宮から阪急に乗ってしまうと「明石焼き」と違うかと、何となく思う。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅