12月になるとバーによく行く。決して盆と暮れのクラブやラウンジではない。
ところでTwitter
みったん@bluesy_k
僕は旧ミーツ(江弘毅編集長時代)でコラム書いてた人には店の名前出さずに上手いもん話ができると思うしして欲しいと思う。
といった書き込み、いや呟きがあったので、その時代のMeetsの特集からバッキー井上によるこの店の短い記事を載せる。2003年5月号「特集 パーをよろしく」から。
ミナミに行く用事があるとそのスケジュールがタ方の5時近くに終わるように必ず段取りをする。道頓堀のこの店に行きたいからだ。俺はこのバーが好きだ。 だからこのバーには男女を問わず大好きな奴としか行ったことはない。だからたくさんの奴と行ったがそのすべての顔をハッキリと覚えている。その時にどんなことを話して何を飲んだかもほぼ憶えている。バーでは何かは生まれない。生まれると思うのは錯覚に過ぎない。バーは何かを失いに行くところだ。知ってか知 らずかそれを潜在的にわかっている奴と飲む酒はうまい。それが『バー・ウイスキー』であれば至福である。マスターの小野寺さんもそれを知っているからだ。 だからシャツのカフスは長い。ピールを宙でふる。パーは空気と言いたげだ。
大人という単語をむやみに使う雑誌が気色悪いのは物欲しげだからだ。いいバーに行きたい相手は「もういらん」と言いたげな奴だ。雨が降っているからパーに行こう。寒いからバーに行こう。したいことなどないからパーに行こう。マスター今宵またお願いします。
編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。