1月10日
大阪 福喜鮨

「お軒み焼きとうどんと鮨(たまに洋食)は近所のがいちばんうまい」と思い出して確信に変わったのは、消費にアクセスする情報誌の編集から少し距離を置いてからだ。(所謂グルメライター的な存在にならんでよかった)
「そして人の味覚というものは変わる」。そういうことを、書籍はじめ、あちこちで書いてきた。(第10回酒場フォトグラファーと,バッキー井上と養老孟司先生。堂島サンボア/大阪・北新地)。が『福喜鮨』は例外だと思う。(いやしかし梅田も地元近所か)
 私見だが大阪を生活の場所とするわたしにとってここの鮪は世界一だと思う。日本橋の本店の方は、ちょっと客とかわたしらの街的感覚とあまりに違う方々が多くて散遠しているし、地元じゃないと思っている。

    うめだ阪急の店にはよく行く。(といっても月1ペースだが。なんせ高こつく〕
 ほんまは本店の万がシャりがずっと辛口で酒に合うと思うが、ここ数年、山仲さんや板前と世問話をする仲になってきて阪急店のほうがうまくなってきた。ワサビからしてすごすぎる『福喜鮨』の歴史や店のスタンスなど詳しいことについては拙著『有次と包丁』で読んでください(山沖さんはずっと有次を使っている)。
 「カネがあったら毎日来ますわ」「この値段でおいしなかったら、暴れますわなあ」が山仲さんへのいつものギャグだが、店の感じや店の人の良い意味でのは「水商売具合」も大阪的に最高略だと思う。
 冬はブリ。今年も楽しみにしてた。全然違う。鯛もそうだが○×産とかじゃなくて何が違うんだろう。これを食べるとよそで食べられへん。
 中ト口の鉄火、鯖。赤だしは「目玉がはいってるとこ」で。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅