5月29日
大阪 船場 𠮷野寿司 平岡珈琲店

 とあるメディアにこの店のことを書かなあかんことになっていて昼飯に行く。あら、いつのまにか暖簾の字や色が変わっている。
 2回に案内される。メニューが出てくる。あら、知らん間に名物だと何回も書いた「デラカルト」がなくなっている。
 「箱寿司と𠮷野巻」を注文。「天然の鯛の子です」と小鉢が出てきてにこごりに大根、ゴマをかけたもの。絶品である。酒が飲みたなるが辛抱。
 箱寿司1枚、𠮷野巻2切、鯛のすましもいい。うまいから一気に食べる。「ごっつおさん」と下に降りると、「早いですね」と言われる。なんかゆっくり味わってないみたいで申し訳ない気分になりながら平岡珈琲店へ向かう。
 カウンタに座りいつも通り平岡ブレンドとドーナツ。店主小川清さんがいつものボイリング法で淹れてくれる。
「うわあ、いいにおいですね」
「豆は焙煎したり挽いたり淹れたり、変化してるときに良い香りがするんです」
 あれこれ話して、濃い味だけれどすっきりのコーヒー、そしてコーヒーをよりおいしく飲むためにつくられたドーナツを食べる。
 考えてみれば𠮷野寿司さんで食べた3倍の時間を過ごしている。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅