9月3日
大阪 福島 鮨ふみ

 旧知の鮨職人が独立して福島に店を出した。早速開店の日にお祝いの酒一本をぶら下げて食べに行く。
 わたしのオフィスがある堂島浜から福島は案外近く、歩いて行ける距離で、それも嬉しい限りだ。
 店主・平谷史郎さんは日本を代表する大阪・日本橋の『福喜鮨』出身だ。『福喜鮨』は大正時代に東京から大阪に来て、江戸前にぎり鮨を伝えた老舗だ。
 この新しい店で、づけマグロやコハダや玉子焼きの握りのスタイルを見ても、煮ハマグリのツメや辛いシャリの味覚もまさしく東京の鮨の流れそのもの。見事な本手返しで鮨をにぎり、捨てシャリの際の桶を叩いて落とす作法も『福喜鮨』流だ。
 こういう店が北新地や従来の南地ではなく、どちらかというと若い層で賑わう福島に出来るあたりもおもしろい。

記事一覧
江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅