10月31日
神戸 東門街 酒肆 大関

 三宮の東門街に炉端焼きの『大関』が2軒あってよく行く。土曜日夜19時。さすがに店は満杯で、炉端の上は、焼き魚や焼鳥、目刺しやぎんなん、ししとうや椎茸…。すごい光景。
 それを若い女の子がテキパキとさばく。手羽先をつかみ、脇にあるまな板でよく焼けて食べやすいように骨を外したり、サンマに切り目を入れたり。磨丁は器用に左手で扱う。櫂を延ばして食材の入ったバットや笊を載せ、ひょいと手元に放る。何から何まで職人技でかっこいい。
 こういう仕事、アルバイトでは出来ない。絶対「面白い」「やりたいな」と思わないと出来ない仕事だ。この女の子、多分20代と思うのだが、どういうきっかけで炉端焼きに入ったのか訊いてみたい。
 誰かに連れて行ってもらって「すごいな」と思ったとか、親戚のおばちゃんがやっていてとか、そういうのなのだろうか。
 この店はスタンダードにうまい。確かにグルメ雑誌やミシュラン的でないかも知れないが、外国人には絶対受ける。焼きものは何でも5百円で、さすがに大関直営とあって酒も安いのも魅力。
 焼きおにぎりとたらこは最後の方で絶対頼むアイテム。焼きおにぎりは2種類あるが、小さい俵型の方をいつも頼む。

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江弘毅

編集者・著述家。雑誌ミーツリージョナルを立ち上げ、1993〜2005年編集長を務める。
2006年編集出版集団140B創立。著書「有次と包丁」(新潮社〕、「飲み食い世界一の大阪」(ミシマ社)など多数。毎日新聞連載中の「濃い味、うす味、街のあじ。」の単行本化、140Bから7月15日発売。

江弘毅